猪狩蒼弥くんのFence[2020ver.]によせて
ねぇ猪狩くん。
きみはふわふわの心を持っているのにガチガチに武装したように見せるのがとても上手いね。
きみのいる世界は上下入れ替わりは当たり前で、明日は我が身の不安定な世界なんですよね。
人は知らないものに出会うと、何かに例えざるを得ない。怖いのかもしれない。まるで◯◯みたいだ、と、これまでの記憶を手繰り寄せて自分の経験から似たものを探して当てがおうとする。他の誰かに例えるのは、恐怖や不安からくる本能かもしれない。
彼はまだ誰も行ったことのないところへ行こうとしてるんだなと解釈してからは、もう私は何かに例えるのはやめにしました。
ちょうどFenceで殴られた夏あたりからです。
俺は俺。なんですよね。
まぁもちろん彼に限らず、どのアーティストも、俺は俺。みんな唯一無二なんですよね。
誰かに例えることは、その場所に辿り着いたその人そのものや例えられる人それぞれに対して失礼だよなと悔い改めました。(ちょっと話が逸れました)
その上で、猪狩蒼弥の唯一無二っぷりは凄まじい。
夏に思った。
事務所、彼に見限られるようなことはすんなよ。彼を逃すなよ。
秋に思った。
ゆうぴ、君のグループには猪狩蒼弥がいる。良かったな。
これは上からというよりも、誰か優斗を助けてというような気持ちだったから。一種の縋るような気持ちだった。
少年倶楽部でTHE GARRY作詞作曲のFenceが披露された。
仕事を終えた私は、すでに世間がFenceを履修したあとの世の中へ降り立った。しかし世の中がいつものように機能していることに疑問を感じた。
Mステに向けて帰路を急いで行く。電車、動いてる。信号、ついてる。
みんな、生きてる…?この世界をFenceを通った後なのに?本当に?みんな、強くねぇか?
夏の演出が強烈すぎたので放送レベルに緩和された世界でしたが、今度は深かった。
猪狩くんがすごく大人になっていた。
私が見た16歳のFenceは、衣装もまだ背伸びしていたんだな、なんて思った。
それくらい今回の衣装は猪狩蒼弥のこの世の姿にぴったりと合っていた。
17歳。
夏より大人びたFenceは、すっきりと整えられ、でも言葉で殴られるのは相変わらずだった。
16歳のFenceでは、猪狩くんが関わったという文字が出るモニターが好きだった。
言葉で殴られ、言葉に支配され、緑の光に包まれる、異様な空間。
それから侍との絡みも好きだった。言葉で殴りながらも実際に侍を掴み、離す、という動きがあり、それが余計に彼の言葉を大きく見せていた。
そして17歳のFenceではあらゆる演出が削ぎ落とされた。大人しくなったのは様々な事情があるのかもしれないが、本当にマイク1本で戦っていた。
良し悪しは、ただの好みだと思う。
矢花くん、夏と変わらず挑発的にいてくれてありがとう。挑発には乗らない猪狩くんを見て、すごく好きだったなぁと夏に想いを馳せる。
猪狩くんは最後に右の内ポケットにマイクを納めた。
おぉぉ……納刀…か…
左利きの彼は、右に刀を下げているのだ。
マイク一本で戦う武士。
彼は自分のアンチコメントをあえて見るとか、周りの意見を気にしないとか、よく強い言葉をくれる。(それと同時に優しい言葉もいっぱいくれる。ファンのみんなならそこは私より知ってると思う)
その反面、アイマスクとイヤホンを愛用し、音を遮断しないと眠れなかったり、すぐ不眠になったりする繊細な部分がある。
ファンのみなさんは、その部分を大きな声では言わないけど、可愛いなぁと思いつつ心配もしてる。でも彼は、自分が心配されたり、悩みの種になってることは望まないからファンはそれを言わない。
繊細な部分は物を作る上ですごく大切で。そこを捨ててしまったら自分は楽になれるけど、物を作るときに困る。経験のある人も多いと思う。いっそもう捨ててしまいたいと嘆く。(私です)なくても作れるけど、あった方がより広いものが作れる。彼はそれをわかっているんだろうな、なんて思う。捨てたいなんて思わないんでしょうね。(憶測です)
繊細な部分をガシガシ傷つけられても、「あ、丸見えで傷付いてるように見えるかもしれませんが、今上に透明なガラス張ってあるから傷ついてないです。大丈夫です」って笑顔で言える人。そんなガラスなんてないのに。(憶測です)
だからよく思う。
彼の感性よ、ありがとう。
彼が撮った写真ひとつ見ても彼の感性は素晴らしい。
彼の見る世界がすごく美しく、繊細で、よく丸腰でいられるな?って心配になる。
強そうに見せられるところがせめてもの救いである。
あれ?私何の話してたんだっけ?Fenceの話をしたかったはずだけど。
推しへの欲目や盲目さも含めて心の広い皆さんなら笑いながら、お紅茶を飲みながら、なんならビールを飲みながら読んでくれると信じている。いつもキモくてごめんね。愛をこめて。